材料となる「西条柿」の歴史は古く、16世紀頃には干し柿として加工され、保存食や携帯食として珍重されていたそうです。岡山県矢掛町山ノ上地区には、樹齢200〜300年と推定される西条柿の古木があり、昔から西条柿で干し柿づくりをしていました。
山ノ上地区で育てた西条柿でつくる干し柿を、なぜ「最上干柿」と呼ぶのでしょう。その由来は、干し柿づくりが始まった江戸時代にさかのぼります。
むかしむかしのお話。山ノ上で作った干し柿を江戸のお殿様に献上したところ、「最上に美味しい干し柿だ」とお褒めの言葉を賜りました。それから山ノ上の干し柿は「最上干柿」と呼ばれるようになったと伝えられています。
最上の美味しさを昔と変わらぬ手づくりで。干し柿の里・土井農園からお届けします。
西条柿は中国地方特有の渋柿の品種です。成熟すると皮の表目にタンニン(渋み成分)があらわれ、地元では黒い柿ほど甘みが強いとされています。土井農園では不思議と黒い部分の多い西条柿が実ります。
自家栽培の西条柿で手作りする
土井農園の最上干柿
良い干し柿をつくるには、良い柿をつくることから。土井農園の柿畑は、太陽の日差しをさんさんと浴びて育つように東南に面した傾斜地あり、そこで西条柿を丹精込めて栽培し、良質の柿の実だけを選んで干し柿にしています。剪定、摘果、肥料やり、収穫、そして皮むきも手作業で丁寧に行っています。
土井農園の庭に、樹齢100年近くになる西条柿の大きな木が2本あります。昔からこの柿の実で干し柿をつくり、祖母から母へ、そして娘へと代々受け継いできました。今もたくさんの実をつけてくれるこの柿の木は、土井農園のシンボルともいえる存在です。
聞くところによると、柿の木の寿命はとても長いとか。きちんと手入れをしてやれば、まだまだ元気に実をつけてくれるでしょう。柿畑にある約80本の柿の木も大切に育て、100年、200年と末長く残していきたいと思っています。
夏でも気温差が大きく、秋に早く気温が低くなる山ノ上地区は、味や品質の良い西条柿が育つ好条件が整っています。西条柿は渋柿ですが、渋みに隠れていても強い甘みがあり、糖度は約18度と柿のなかでもトップクラス。土井農園ではこまめに手をかけることで、より糖度の高い西条柿を育てています。
西条柿は干して渋が抜けると、さらに糖度が凝縮されて50度前後になります。これはどんな果物よりも甘く、しかも果肉が緻密で柔らかいため、相乗効果で上品な甘さに仕上がるのです。西条柿でつくる干し柿が高級品とされる理由です。
岡山県南部に位置する矢掛町は、温暖で晴れの日が多く、農産物の栽培がとても盛んです。なかでも標高の高い山ノ上地区は霧が出にくく、晩秋から乾燥して冷たい西風が吹き抜けることから良い干し柿ができ、その評判の高さから矢掛町の特産品になっています。
土井農園のつくる干し柿は、赤みのある美しい色と柔らかさが特徴で、毎年約2万個の「最上干柿」を手づくりしています。表面には果糖が結晶化してできた白い粉がふき、まるで霜をまとったような姿です。丁寧な熟成作業を何度も重ね、昔ながらの天日乾燥でつくる干し柿です。
土井農園のこだわりは、見た目の美しさと柔らかさ。箱を開けた時に「きれい!」と喜んでいただけるように、色味を合わせて箱詰めしています。ほんのりと赤く美しい「最上干柿」。ご贈答用に最適です。
土井農園は昔ながらの製法を
継承し続けます。
土井農園の干し柿づくりに必要なのは、冬の陽ざしと乾燥して冷たく吹き抜ける西風だけ。雨降り続きで風を送るために扇風機は使っても、天日乾燥と繊細な熟成作業を積み重ねてつくる干し柿は、西条柿本来の美味しさが際立ちます。毎年この味を楽しみにされているお客様のために、昔ながらの製法を受け継ぎ、「最上の美味しさ」と褒め称えられた味をこれからも守り続けていきます。
中国地方が主な産地の西条柿は、農林水産省が発表した「平成30年産 特産果樹生産動態等調査」によると、全国で栽培されている渋柿のわずか1.5%にすぎません。希少とされる西条柿でつくる「最上干柿」もまた、希少とされる理由の一つです。
その希少な西条柿でつくる土井農園の「最上干柿」が、この度、岡山県商工会連合会が岡山県の特産品として認証する制度、「晴れのめぐみ」岡山ブランドに認定されました。作り手としてとてもうれしく思います。
ただ、認定されたことを喜んでもいられません。山ノ上地区も他の産地と同様、作り手が少なくなりつつあります。次の世代に伝えていくためにも伝統を継承し、「最上干柿」に懐かしさと新しさを感じていただけるよう努めていきます。